過日、姪の結婚式に夫と娘と三人で参列しました。
前日まで心配した雨も上がり、真っ青な空に木々の緑が映えて、出発前から心が弾んできます。
式場となったのは、木の香の漂う真新しい天理教の教会で、会場設営や式の運営、また参列者を迎える準備のために、大勢の方々が労を惜しまず心を尽くしてくださっている様子を目の当たりにし、ありがたく思いました。
この日の主役、幼い頃からコロコロっとよく笑う笑顔美人の姪は、花嫁衣装がよく似合って、とてもきれいでした。
彼女に限らず、結婚式の時のお嫁さんって、本当に綺麗だと思います。もちろんそれは、普段とは違う衣装や場所だからということもあるかもしれませんが、私はきっと、その日を迎えた彼女たちの心、親に育ててもらった感謝の気持ちや、伴侶を得て共に歩む人生への喜びと決意などが輝きとなって、表に現れてくるからなのだと思います。
いよいよ式が始まりました。二人の前途を祈って首(こうべ)を垂れていると、これまで大変な中、心明るく5人の子どもたちを育ててきた妹夫婦のことが思われて、こうして娘の幸せな姿を見られる日が来たことを、共に喜ぶ気持ちがふつふつと込み上げてきました。
目を上げれば、隣にいる夫も同じ気持ちなのでしょう、花嫁の父でもないけれど、目尻に光るものがありました。
開け放たれた神殿には明るい光が差し込み、さわやかな一陣の風が渡り、新夫婦の誕生を祝ってくれているように感じられました。
さて、場所を移しての披露宴。心のこもったお祝いの言葉に涙し、飛び出すエピソードに大笑いし、友人たちの余興には、しっかり盛り上がりました。
やがて宴も終盤に差し掛かり、新郎家族、親族から二人へのメッセージが読み上げられました。
新郎の弟さんたちからは、新しく姉を迎える喜びや、環境の変化を気遣う言葉が、また、大勢おられるおじさんやおばさんは、皆夫婦でマイクを持ち、新郎の幼い日の思い出や、長年連れ添った結婚生活の極意に至るまで、思い思いの言葉で楽しいトークを繰り広げ、二人を励ましてくださいました。
ああ、こんな家族なら姪をしっかり託せるなあ。どんな日があっても、きっと乗り越えられる素敵な家族だと、心から安心しました。
そして、いよいよ最後のメッセージは、病のために出席できなかった、新郎のお祖父さまからでした。
「ふたりのこゝろををさめいよ なにかのこともあらはれる」
(二人の心を治めいよ、何かの事も表れる)
そうだったのですね。結婚式の最初から、ずっと私が感じていた温かいもの。新郎の大家族の仲の良さ、笑顔のルーツをここに見つけました。
天理教では、人間を創造された神様、親神様は、男だけでも女だけでもなく、夫婦をお創りくださったと教えられています。夫婦がこの世のはじまりなのです。
何億という人の中から、不思議な縁で結ばれた夫婦とは、お互いに思い合い、労わり合うのはもちろん、足りない所は補い合って成長していく相手。
そうして二人が心を一つに合わせていくところに、ちょうど温かな大地と天からの雨で、草木がすくすくと育つように、また絶妙の火加減と水加減で、おいしいご飯が炊けるように、一人では味わえない幸せが生み出されていくのです。
お祖父さまからのメッセージ、「ふたりのこゝろををさめいよ なにかのこともあらはれる」とは、天理教の原典の中から引用されたお言葉でしたが、お祖父さま自身、きっとこのお言葉を頼りに通られた日々があり、どんな時も、夫婦の心さえしっかりしていれば大丈夫!という確信を持たれた出来事があったのでしょう。
だからこそ、その思いを伝え続けてこられ、また子どもたちもよくそれに応えて、親の思いに素直に歩んできた結果が、今日の日なのではないかと想像しました。
机の上の計算なら、1たす1は2ですが、夫婦の足し算の場合の1たす1は、良くも悪しくも無限大に広がります。同じ無限大なら、先を楽しみに今の苦労をかって出たいものですね。
新しく夫婦の仲間入りをした二人には、是非お祖父さまの思いを二人の約束事として、これからの人生を歩んでほしいと思いました。
気がつけば、披露宴の時間はすっかりオーバーしていました。誰もが笑顔と感動をお土産に家路についた、素敵な結婚式でした。
何日かして、姪から新婚旅行のお土産のコーヒーが届きました。さっそく封を切り、夫と二人、コーヒーの香りを楽しみながら、結婚式の余韻に浸ることができました。
立ちのぼる湯気を眺めていると、セピア色をした私たち夫婦の出発点にも思いが至りました。
私たちも結婚して36年。いろんなことがありました。もちろん、平穏で穏やかな人生であれば、これに過ぎる喜びはありません。しかし実際には、山もあり谷もあり、時には大嵐だって・・・。
そんな時に、二人が立ち戻れるのは、結婚した時の約束事があったからだと思います。
結婚式の日に、夫と「これからは二人で親を大切にしていこう、親に喜んでもらえるように頑張ろう」と、ただ一つの約束を交わしました。
考えてみれば、山も谷もあったからこそ、そのたびに二人で話し合うことができ、また、結婚した時のあの約束事があったからこそ、初心にかえり、もう一度歩み出すことができたのだと思います。
「ふたりのこゝろををさめいよ なにかのこともあらはれる」
さあ、若い人たちに負けてはいられません。私たち夫婦の足し算も、まだまだ続きます。だって、無限大ですもの。
皆様、乞うご期待!
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