母の一大事 Part2

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「吉福さーん、こんにちは。検温お願いします。」

昼下がりの病室には、ゆったりと時間が流れています。

「吉福さんは、いつも違う顔の人が来てくれて、いいですね。近頃は土曜、日曜でも面会に来てくれる人がない方も多いんですよ。」体温や血圧を図りながら、看護師さんが優しく話しかけてくれました。

「お母さんは頑張ってたくさん子どもを産んだものね。みんなには親孝行してもらわなきゃね。」と姉が返すと、聞いていた母はにっこり微笑みました。

95歳の母は今入院中です。私は、この原稿を母の病室で書いています。

2年前、お風呂場で転び、骨折したときの顛末を、「母の一大事」として書きました。自分で自分のことがままならない状況でも弱音を吐かず、周囲が誰も無理だろうと思っていた極寒の天理へのおぢばがえりを果たしてしまった母の強い信仰心には感動しました。

骨折から約1年かかって少しずつ体力を取り戻し、やっと元の生活ができるようになりました。

デイサービスにも復帰して、穏やかな母は誰とでも言葉を交わし、和やかな時間を楽しんでいるようでした。

時折には、姉が旅行に連れ出してくれるので、温泉に浸かったり、美味しいものを食べたりと、単調な毎日に華やぎを与えてもらっていました。

日は流れ、いつしか骨折して寝たきりになった日も遠く忘れ、95歳の誕生日には、子ら、孫ら、そしてひ孫たちもお祝いし、「100歳までも元気でいてね」と皆の心は前へ前へと向かっていました。

春。

長い冬を乗り切ったご褒美のように、庭の花達が一斉に咲き出しました。

蠟梅、ツバキ、梅、桜・・・

その後に続くのは、我が家の庭のメイン、10本以上ある牡丹です。

「今年の牡丹は少し早いみたい。もうすぐ花が咲きますよ。楽しみね。」食卓で母とそんな会話が上っていたある日、母が発熱し、おまけにおなかが痛いというので、かかりつけ医にかかったりしているうちに、あれよあれよと病状が変わり、気がつけば、総合病院に入院することになりました。

 95歳の入院ということで、治療もさることながら、入院生活に耐えられるかどうかがとても心配でした。完全看護と言っても、四六時中見てもらえるわけではないのは当然です。環境の変化が母に与える様々な事態を考えて、できるだけ誰かが母のそばにいるように心がけることになりました。家にいるときと同じようにゆったりしてもらえたらいいなと思ったからです。

ありがたいことに、名古屋に住む姉が、時間を割いては何日間も付き添ってくださり、その姿をお手本に、だんだん付き添いの日課が整うようになりました。姉は、夫の一番上のお姉さんで、7人兄弟の長女です。兄弟の中で一番苦労してきたはずなのに、一番朗らかで、思いやりに溢れた人柄です。

家族の揉め事も、相談事も、みんなが姉を頼りにして、姉の言うことなら、みんな納得です。友達も多く、古稀を過ぎた今でも、毎日が充実してとても忙しそうです。親孝行もピカイチなのはいうまでもありません。姉を見ていると、「『幸せを呼び寄せる生き方』って、きっとお姉さんのような生き方だろうな」と思えます。

さて、教会では、母の平癒を祈るお願いづとめを毎日勤めています。また、各地におられる教会の信者さんたちも、母の入院を知って、こちらからお願いしなくても、朝夕に神様にお願いしてくださっていると聞くと、ありがたくてたまりません。

少しでも母の口に収まるものをと、優しい味を手作りして届けてくれる人、大きいおばあちゃんの部屋に飾ってほしいと一生懸命書いた絵を持ってお見舞いにくるひ孫たち。

最近作りたての、教会に集まる女性たちのライングループには、介護職の人たちがおられ、少しでも口に入りそうな食品の情報をいっぱい教えてくださいます。

家では、留守になる私に代わって、全てを切り盛りしてくれる嫁や息子たち。それぞれの人たちが、自分のできることを精一杯して、母の回復を祈ってくださっていることが有り難く、とても嬉しく思います。

まさに、これこそ、いつも私が目指している「教会という家族」の姿に近づいているように感じられます。

私が言う「教会という家族」とは、

教会に住んでいる家族だけではなく、教会を心の拠り所として参ってくださる多くの人たちも含めて、みんなが思い合い、助け合っていける大きな家族として繋がりです。

母の一大事は、入院から約20日が過ぎ、そろそろ退院の方向に進んでいます。本当にたくさんの方々の祈りの力があったればこそと、感謝しています。

そして、こんな大変なことになっても、私たちが落ち込むことなく、前を向かって進めるように、神様は大きな喜びもくださったように感じています。

入院した日のことは、書けば長過ぎて大変なことになるので割愛しましたが、周りにいる私たちの仕事に全く支障なく、しかも母にとっても負担の軽い、これ以上ないタイミングでした。

病気が分かってからの医療や介護の方々との出会いも、不思議なほどスムーズで、何一つつまづくところがありませんでした。

そして、私にとっては、夫と結婚して40年。母と親子となってから、これほど長くゆっくりと一緒にいる時間は初めてでした。ありがたい時間を過ごさせてもらいました。

何もかもが親神様の御守護の中に抱かれていることを実感しています。

窓の外には五月晴れの街が今日も静かです。

病室の壁に飾られたひ孫の作品を眺めながら、早く退院のお許しがいただきたいねと、今日も親子の会話が続いています。


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