幸せの真っ赤なポスト

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 長男夫婦と二人の孫たちがアメリカに渡って二年が経ちました。寂しい思いはありましたが、近況を知らせてくれる嫁の手紙は、今では大きな箱いっぱいになっています。

 出発の時にはまだ片言しかしゃべれなかった孫たちも、おしゃべりができるようになり、幼児特有のおもしろ発言を連発している様子も逐一報告してくれるので、毎日ポストを開けるのがとても楽しみです。

 ほかにも息子からのビデオレターや、孫たちのテレビ電話など、忙しい仕事の合間にも私たち親に気遣いをしてくれていることを、心から嬉しく感じます。

 さらに最近では、字を書けるようになった孫からの手紙も加わりました。「おじいちゃん、おばあちゃん、アメリカにきてください。おねがいします」との手紙を受け取った時には、今すぐにでも会いに行きたい気持ちにかられました。

 さて、そんな長男家族が先日一時帰国し、家の中が一変に賑やかになりました。聞きたいこと、話したいこと、連れて行ってあげたいところなどなど、会う前から思いがいっぱい膨らんでいました。

 孫たちとは何をして遊ぼうかなと考え、「そうだ!お手紙ごっこをしよう」と思い立ちました。そこで早速、主人にポストを作ってもらいました。私は、ただ簡単な投函口と取り出し口さえあればと考えていたのですが、手先の器用な主人は気合十分。菓子箱に真っ赤な紙を貼って、郵便のマークまでついた本物そっくりのポストを作ってくれました。

 孫たちも真っ赤なポストが大いに気にいったようで、毎日何通もの手紙を投函し、当番の時には取り出した手紙をみんなに配達して回って楽しんでくれました。 

 こうして孫たちと関わってみて、離れていた二年間のあいだの生活を、多少なりとも垣間見ることができた気がします。考えてみると、手紙とは遠くに離れている人に思いを伝える手段ですが、また一つには普段、面と向かっては口にしないことでも、さらりと言ってしまえる力があると思います。

 「おばあちゃん、げんきですか。あえてうれしい」

 力強い大きな文字が紙いっぱいに書かれていて、胸が熱くなりました。

 この子は生まれてくる前に大きな病気が見つかり、未熟児で生まれてきました。

成長してくれたことだけでも感謝ですが、初対面の人とうまく関われなかったり、特定のものにこだわりがあったりして、アメリカへ行くことになった時、とても心配しました。

 現地の幼稚園では、想像したとおり大きな言葉の壁に突き当たり、泣いて登園を拒否したこともあったそうです。大人でも辛いだろうと思う環境を通り抜け、今では友だちとも仲良く遊ぶことができ、クラスにも溶け込んでいるとのこと。頑張り抜いた自信が文字にも顔にも表れていて、ひと回りもふた回りも大きくなったような気がします。

 また、まだたくさんの語彙を持ち合わせない孫だからこそ、核心をずばりと突くことができたのかなと思う時、手紙を書く機会が多い私ですが、ついつい多くの言葉を使いすぎ、かえって相手に思いが届いていなかったのではないか、ともすれば紋切り型の味気ない言葉を使ってはいなかったかと反省します。思いを込めて、いちばん言いたいことを素直に表すことの大切さを、孫に教わった気がします。

 そのほかにも、たくさんの絵を描いた手紙が届きました。見ただけでは分からない絵にも、聞いてみると意外なストーリーがあり、たった一通の手紙からどんどん会話が広がっていきました。

 「みんなのお顔の中で、お父さんのお口だけどうして開いているの?」と聞いてみたら、「お父さんはね、ボクの誕生日ケーキを早く食べたいと思っているの」と答えて、周りの大人が大笑いしました。小さな子どもでも、色々なことを思い考えているのだと、あらためて感じました。

 大きなおうちの絵には、おじいちゃん、おばあちゃん、ひいおばあちゃんもいて、二階、三階へと続く階段でつながれていました。

 日頃は遠くにいる家族でもちゃんと絵の中に出てくるのは、心の中に住んでいる証拠。息子たち夫婦が普段の生活でも、私たち親のことを話題にのせて、子どもたちに聞かせてくれているからだと思い、とても嬉しくなりました。

 社会のあり方が変わってきて、二世代、三世代が同居することが少なくなりました。また、仕事の都合や子どもたちの学校生活に支障をきたすことなどから、遠く離れて暮らす家族が行き来する機会も、なかなか思うにまかせないのが現実です。

 しかし私たちは、誰もが親から生まれ、親に育ててもらってこんにちがあります。私たちの親も、その親も、そして私たちの子どもも、またその子どもも、誰ひとりとして例外ではありません。命のつながりは、親があってこそだと思います。離れていても親へ親へと寄せる心が、引いてはわが身、わが子の幸せにと返ってくるのだと信じます。

 天理教の教祖「おやさま」は、人間の生きる目的は「陽気ぐらし」であると教えてくださいました。陽気ぐらしとは、人と人とがお互いに相手を思いやり、尊重して、お互いにたすけ合う生き方をいいます。

 一家の陽気ぐらしが元となって、次から次へと陽気ぐらしの輪が拡がっていくことを願いつつ、まずはちょっとの努力と工夫で、わが家流家族の絆をつないでいきたいものだと思います。

 まるで台風が去っていくように、長男家族は慌ただしくアメリカへと出発していきました。短い滞在でしたが、あの真っ赤なポストのおかげで、孫たちと心を通わせる貴重な時間を持てたことに感謝します。

 今度会う時には、孫たちは一段とたくましい少年に成長していることでしょう。帰ってきたら、またお手紙ごっこをしましょうね。幸せを運んでくれる真っ赤なポストは、それまで大切にしまっておきますから。


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