根っこの物語

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 ぽっかりと浮かぶ雲に、夏を感じています。桜、ボタン、つつじと、今年もきれいに咲いてくれた花々がひと段落し、わが家の庭は青々とした緑がまぶしく感じられます。そして、草取りが本格化するのもこの頃で、長袖シャツと大きな帽子は必需品です。

 毎年抜かれる運命の雑草たちですが、年とともに愛おしさを感じるようになりました。電気コードぐらいの細さの雑草は、ひょろーっとしながら30センチも40センチも伸びていきます。芯もあり、幅もある30センチ物差しを地面に立ててみても、こんなにうまくは立ちません。雨が降っても風に吹かれても、ゆ~らゆ~らしながら伸びていき、花を咲かせている姿には感動さえおぼえます。

 根がある、根につながっているということは、すごいことだと思うのです。いくら綺麗に咲き誇る花でも、花瓶に活けられた花は、いつか枯れてしまいます。しかし、根のある花は、踏みつけられても明日にはまた頭をもたげています。冬になり、枯れてしまったかなと思いきや、土の下でどんどん根を張って、次の春には去年以上にたくさんの芽を出し、花を咲かせてくれます。

 人間も、実は同じではないかと思うようになりました。私たちの根はどこにあるのでしょうか。

 やっと一人歩きができるようになった孫は、歩けることが楽しくて仕方がないというように、トコトコとどこまでも歩いていきます。母親が呼び戻そうとしても、時々振り返って母親がいることを確かめては、また勢いよく歩いていきます。

 ところが、振り返った時に母親の姿が見えないと、さあ大変。泣いて母親を探しまわります。そして母親を見つけると、飛びついて抱きしめてもらい、その胸に抱かれるや、すっかり安心して眠ってしまいました。

 お母さんは、根っこ。子どもにとって、母親に見守られているという安心感が、どれほど大きいものかと感じます。

 私は3人の子どもを授かりましたが、子どもたちが成長し、やがて自分の行く道を模索し始めた頃、いちばん頼りになったのは夫の言葉でした。

 長男が大学を卒業したら南アフリカへ行きたいと言い出した時も、次男が家から離れた大学生活でやんちゃをした時も、娘が留学したいと言ってきた時も、子どもたちの思いにじっくりと耳を傾け、その上で危ない道に行かないようにと、適切なアドバイスをしてくれました。そのおかげで子どもたちは、自信を持って自分らしい生き方を見つけることができたのだと思います。

 お父さんは、根っこ。子どもにとっては、普段はあまり気がつかなくても、時には大きな傘になったり、防波堤になったりして、家族を一つにつないでくれている大きな存在です。

 さて、そんな私たち夫婦も、親にどれほど育ててもらったことでしょう。亭主関白を絵に描いたような父でしたが、実は母の内助の功があってこそだったと、今になってつくづく感じます。

 晩年の父は、どこへ行くのも母と一緒でした。二人揃って出かけていく後ろ姿は、とても楽しそうで、「あぁ、私たち夫婦もこんなふうになりたいなあ」と思ったことでした。

 家族やきょうだいが母を囲んで集まった時には、必ず父の思い出話が出てきます。母に、父の分まで長生きしてねと、きょうだいが親孝行している様を見るのは、気持ちの良いものです。おじいちゃん子だった娘の机の上では、今日も父の笑顔が娘を見守っています。

 おじいちゃん、おばあちゃんは、根っこ。父や母の背中で、そして言葉で、様々なことを教えられての今日の私たちです。結婚した時、父と母に喜んでもらえるようにと、それだけを約束した私たち夫婦ですが、この約束だけは忘れずに守っていきたいと思っています。

 人は一人では生きていけません。時には心を倒すような出来事が起こってきても、家族という根っこに支えられるからこそ、乗り越える力が湧いてくるのではないでしょうか。

 天理教では、神様と人間は、親と子の関係であると教えていただきます。この世と人間をお創りくださった親神様。私たち人間は、みんな親神様を親と仰ぐきょうだいなのです。

 大学を卒業した長男が、二年間南アフリカに行くことになった時、「なにもそんな遠いところへ行かなくても」と言うと、「お母さん、どこにいても親神様に守っていただいたら大丈夫だよ」と、返事が返ってきました。

 そうでした。親神様という根っこにつながる、私たち人間です。

 親神様からはじまった、根っこの物語。長い長い歴史を刻んで、私たち、子どもたち、そして孫たちへと受け継がれています。間には、切れそうになった時もあったはずです。これからも、あるかもしれません。でも、どんなことがあっても大丈夫、根っこにさえつながっていれば・・・そう思います。

 そうだ!今度孫たちが帰ってきたら、話してあげましょう。長い長い、根っこの物語。           


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