育てればあなたの心も育ちます

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『育てているつもりが育てられ』

先日、新聞のコラムに、「育む」(はぐくむ)という言葉の語源が、「羽含む」からきていると書かれていた。なんてきれいな響きなんだろう。日本語のもつ美しさには、時として感動させられる。古来、言葉に魂が宿ると信じられていたのもうなずける。親鳥がわが羽を広げてヒナ鳥を含むように包み込んでいる。そんな情景を想像するだけで、とてもやさしい気持ちになり、心がなごむ。鳥たちの慈しみ深いしぐさに、遠い昔の人たちは自分たちの子育てを重ね合わせたのだろうか。やがて成人し、独り立ちしていく様を「巣立ち」とあらわした。

目を転じれば、新世紀。この日まで連綿と「育まれ」、そして「巣立ち」、繰り返されてきた私たちの「いのち」。遥かなる旅路は、どこを目指そうというのだろうか。

「お疲れさま」と隣県に住むT子ちゃんからいつものメールが入る。「おばさん、元気ですか。私はなんだか毎日毎日イライラして。わが子が可愛くない時がある。自分が産んだ子なのに。できることなら親をやめたい。………なんだか、心が痛い。」

さらに、メールは続く。「子育てって我慢してやるものなの?疲れたよぉ。」

T子ちゃんの心の叫びが画面の向こうから聞こえてくる。小さい頃から教会に出入りしていた彼女は、娘のような存在である。両親がすでにいないこともあって、余計に思いがかかる。
急いで返事を出したものの、会って顔を見るまで心配だった。

わが子をいとおしむ気持ちになれないほど不幸なことはない。本来、その手にいたいけのない幼子を抱けば、自然と「守ってやりたい」そう思うはずである。なぜなら神様がそのように私たちをおつくりくださったのだから。親になる練習なんて誰だってしたことないけど、周りの人たちに助けられ、何よりわが子に教えられ、私たちは曲がりなりにも親と呼ばれる存在になってきた。

近頃、新聞やテレビで子どもたちにかかわる悲しい事件を見聞きするたびに、やりきれない思いがつのる。核家族化が進み、近くに相談できる人がいなかったら、育児に疲れた母親はますます孤立してしまう。一日中、子どもとにらめっこでは神経も擦り減るだろう。「公園デビュー」が頭痛の種になるというのも笑えない話だ。

あれ以来、T子ちゃんとは何度か行き来を繰り返し、いろんなことを話し合った。「ほんと今日は行ってよかった。みんなに可愛がってもらって、嬉しかった。なんか、やっぱり一人では育てられないよね。みんながいるところだと、子どもも喜ぶし、私が一番嬉しかった。……大事に育てたい。」「心をいつも広く、おおらかに受け止めてやらなきゃいけない私が…。毎日が反省です。おばさん、毎日はゆったりとですよね。頑張ります。また、辛くなったら助けてね。」

そうよ、あなたはお母さん!一人で悩まないで。暗いトンネルだっていつかは抜ける。周りを見回せば、救いの手は必ずあるはずだから。時にはズームボタンをオフにして、ちょっと引いたところからわが子を見てごらん。ずいぶん成長したなって思えるよ。いつもいつもアップモードじゃ、子どもだって息がつけないもの。

今にして思うと、私にも肩肘張って子育てしていた時があった。「もっと可愛がってやればいいじゃないか。」父の言葉にふっと目の前の霧が晴れた。いい子に育てるためにと思っていたことが、実は私自身の見栄だと気がついた。私のズームボタンがオフになった瞬間だった。時が過ぎ、やがて「巣立つ」日も間近い我が子たちだが、誰よりも「はぐくまれて」いたのは私だったとつくづく思う今日この頃である。

2002年 天理時報特別号「人間いきいき通信」掲載
執筆者:吉福多恵子


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