たましいの物語

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 10月のことです。万葉のふるさと、飛鳥にほど近い実家で慶び事があり、夫と二人で久しぶりに出かけてきました。

 田んぼの稲穂は金色に波打ち、柿の実が色づき始めた故郷は昔と変わりなく、毎日アスファルトとビルの多い街の中で生活している私にとっては、目が洗われるような新鮮な景色でした。

 また、私が子どもの頃にはなかった新しいお祭りも行われているようで、あちらこちらの家や辻々に立つ、手作りの案山子のユーモラスな姿に心が和みました。どうやら最近では、この案山子を目当てに遠くからも人が集まるようです。昔の城跡へと続く一本道は、家族連れやカメラを手にしたハイカーたちで、結構賑わっていました。

 さて、私の生まれ育った家は天理教の教会で、その日は教会設立から90年を祝う記念の式典が行われました。式次第も進み、記念講演に立たれた先生がこんな話をされました。

 「皆さんは、自分の身体は自分のものだと思っていますか? 自分のものだとすれば、いつでも自分の思い通りになりそうなものですが、そうではないですね。実は私たちの身体は、人間を創られた親神様が貸してくださっているのです。私たちは、親神様から身体を借りて、今日も一日を過ごすことができます。

 ところで、貸し主は親神様だと分かりましたが、借り主は誰でしょう? それは『たましい』です。私たちは、いつか時が来たら、この身体を親神様に返さなくてはなりません。しかし、たましいはずっと生き続けて、今度はまた新しい身体を借りて、次の人生を送るのです」

 そうなのですね。『私』という身体を親神様からお借りした「たましい」は、それ以前に、私の知らない人生を何度も積み重ねているのです。そして今は私となり、これから先いつかその時が来て、私が身体をお返しした後には、また違う身体を借りてこの世に帰ってくるのでしょう。

 世界中の人間は、皆同じようにたましいの歴史のひとコマを生きている。そう考えると、なんと壮大なドラマでしょうか。

 先生のお話を聞きながら、そんなことを考えているうちに、式典も滞りなく終え、和やかな会食が始まりました。この日のために、大勢の人たちが集まって準備してくださった心づくしの品々が、所狭しとテーブルに並びました。

 無事に終えられた喜びで、誰もが打ち解けた楽しい宴です。私も、結婚する前にお世話になった人々が多くおられて、次から次へと思い出話が弾みました。

 宴たけなわの頃、大きなスクリーンに90年前の写真が映し出されました。教会が設立された当時の貴重な写真です。教えてもらわないと分からない、出会ったことのないご先祖様や、この場に居合わせた人たちのご先祖様が、そこにはおられました。

 写真が変わり、段々と時代が下がってくると、あちらこちらから「あ、うちのお婆ちゃんだ」とか、「懐かしい!お母さんが写ってる」との声が上がります。「これ、私の子どもの頃だ」と誰かが言うと、一段と歓声が大きくなって、「まぁ可愛い」との相槌に、どっと笑いが巻き起こりました。

 やがて「ハイ、おしまい!」。解説役の兄の言葉に拍手喝采。束の間の時間旅行は皆さんに大好評で、その後も余韻に浸りながら、楽しいひと時が過ぎていったのは言うまでもありません。

 90年という教会の歴史。それを作り出したのは、そこに縁あってつながった人々の歴史です。90年の間にどの家も代が替わり、子どもや孫の代になっても、同じように教会につながっていてくださったからこその今日なのだと、ありがたく思いました。

 また、天理教の教祖「おやさま」は、「親が子となり子が親となり」と仰せになりましたが、例えばあの写真に写っていたおじいちゃんのたましいは、もしかしたら、時を経て私の子どもに生まれ変わっているかもしれません。

 お世話になったおじいちゃんが帰ってきたと思えば、自分の子どもだからといって、「こらっ!」と声を荒げたり、頭をポカンと殴ったりはできませんね。大切に育てていく気持ちが生まれます。

 目に見えないたましいの存在を信じることで、夫婦は尊重し合い、家族は思い合って、お互いに成長していけるのではないでしょうか。

 先日、孫から手紙が届きました。「おばあちゃん、ぼく6才になったよ。アイスクリームケーキ食べたんだ。おいしかったよ」。飾り気のない文章ながら、素直に育ってくれているなと感じられます。

 子どもの本来持っているたましいは、本当にきれいなものなのだと思います。そんな子どものきれいなたましいを曇らないように磨いてあげるのは、親の役目です。私たちおじいちゃん、おばあちゃんも、そのお手伝いができればいいなと思います。

 縁あって夫婦。縁あって家族。親神様から、いちばん成長しやすいようにと組み合わせていただいたお互いです。

 いろんなことが起こってきても、その中でたましいを磨き合い、たすけあって、親神様の望まれる陽気ぐらしという生き方を目指したいと思います。


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