吉福 成人

岐阜市にある天理教濃飛分教会の教会長をしています。天理教YouTuberとして天理教の教えや活動を分かりやすく紹介しています。また、天理教本部見学ツアーを不定期で開催しています。「天理教四世五世」というコンビ名でM1グランプリに挑戦しています。

2020/5/8

世界は不思議に満ちている

 「賢い子に育って欲しいと願うなら、お子さんにお手伝いをしっかりさせてください。机に向かう勉強だけでは、本当の学力はつきません」。  息子が小学三年生になって初めての参観日に、新しい担任の先生がおっしゃいました。先生は続けて、 「例えば今、算数で余りのある割り算を勉強しています。『40人の生徒が3人がけの椅子に座る時、何脚あれば全員座ることができるでしょう』という問題に対して、40÷3=13余り1、という計算はできても、この問いの答えを導くには、余りの1人にも1脚の椅子が必要だと想像できるかどうかが大切な ...

2020/5/8

親心、弥生の空に昔も今も

 三月三日は桃の節句。おひな様は、女の子のお祭りです。 長女が生まれた時、父はよほど嬉しかったのか、それほど余裕のない中で、ひな人形をあつらえてくれました。所狭しと飾られたおひな様の中から父が選んだのは、渋い草木染めの十二単をまとった、上品な顔立ちの木目込み人形でした。もっと子供が喜びそうな華やかなのを選べば良かったのに……と周りから言われもしましたが、私は自分がおひな様を買ってもらったことがなかったので、あることだけで嬉しくて、とても幸せな気持ちでした。 一年に一度出会えるおひな様は、とてもいとおしく、 ...

2020/5/8

勇人君の宿題が教えてくれた

秋の日のことです。学校から帰ってきた勇人(ゆうと)くんが、お菓子を食べながら、お母さんとなにやら話し込んでいます。「なんの話?」おばあちゃんの私が聞くと、お母さんが教えてくれました。 「今度行われる参観日に、『秋、見~つけた』というテーマで作品を作るそうなんです。それで、参観日までに秋らしいもの、例えばどんぐりとか、いちょうの葉っぱとかを集めてきてくださいと言われていて、この前から勇人と一緒に近くの公園などを探しているんですが、どんぐりが見つからなくて。どうしようと話していたんです」。 「まあそうなの。昔 ...

2020/5/8

ストレスがトマトを育てる

静岡でトマトを栽培しておられる鈴木さん宅にお邪魔したときのことです。床暖房のきいたリビングに、大きなコンテナが積み上げられていました。何だろうと中をのぞいてみると、まだ青いトマトがいっぱい詰まっていました。 「今回のトマトはもう終わりでね。普段は木で赤く熟したものを出荷しているんですが、畑を調整するために、青いのも全部収穫したんです。こうしてしばらく置いておくと、赤く色が差してくるんですよ」と、後ろから声がしました。なるほど、二段目、三段目とコンテナを見せてもらうと、赤くなったトマトも見受けられます。   ...

2020/5/8

母の一大事

「おばあちゃん、見て。大きいおばあちゃんの似顔絵描いたよ。そしてこれはね、バースデーケーキ!」  わが家は、親、子、孫、ひ孫の四世代家族です。孫たちは、曽祖母にあたる母のことを「大きいおばあちゃん」と呼びます。  母の誕生日を前にして、孫たちが誕生日プレゼントを作ってくれました。似顔絵はよく描けているし、紙箱を何段も重ねたバースデーケーキは、ろうそくも飾られた、高さ40センチほどの大作です。折り紙を使っての長い輪飾りもできました。  みんなで母の部屋に持っていくと、母は手を叩いて大喜びです。ワイワイガヤガ ...

2020/5/8

母の一大事 Part2

「吉福さーん、こんにちは。検温お願いします。」 昼下がりの病室には、ゆったりと時間が流れています。 「吉福さんは、いつも違う顔の人が来てくれて、いいですね。近頃は土曜、日曜でも面会に来てくれる人がない方も多いんですよ。」体温や血圧を図りながら、看護師さんが優しく話しかけてくれました。 「お母さんは頑張ってたくさん子どもを産んだものね。みんなには親孝行してもらわなきゃね。」と姉が返すと、聞いていた母はにっこり微笑みました。 95歳の母は今入院中です。私は、この原稿を母の病室で書いています。 2年前、お風呂場 ...

2020/5/8

言葉紡いで

 三年ほど前のある日、親しい友人から「俳句の勉強を一緒にやらないか」との誘いを受けました。以前から俳句や短歌を作ってみたいなという思いはあったのですが、なかなかきっかけがなく、その思いは心の隅に追いやられていました。聞けば、先生もおられて、本格的な指導が受けられるということで、もちろん二つ返事で参加を決めました。  ほかにも、呼びかけに応じて、すでに嗜みのある人はもちろん、今まで俳句などとはおよそ無縁だったような人も名乗りをあげて、ユニークなメンバーが集まりました。 集まる日にちが二十四日と決まっているこ ...

2020/5/8

母から受け継ぐいいあんばい

 夏の一日。まだ照りつける日差しに、軒先には直径1メートル以上ある竹製の丸いザルが干してあります。一年中で一度だけ使われるこの道具、さて、何に使うのでしょうか。答えは、梅干しを土用干しするためのザルなのです。皆さん、知っていましたか?  私は、結婚して母がこのザルを物置から出してきた時に、何に使うのだろうと、その大きさと共にびっくりした思い出があります。里の母も何年かに一度、梅酒や梅干しを漬けていたのを見たことがありましたが、こんなザルは使っていませんでした。きっと、これを使うほどの量でもなかったのでしょ ...

2020/5/8

心の奥に眠る言葉

「くも」という題名の詩を読みました。 「空が青いから白をえらんだのです」 たった一行の詩です。 「空が青いから…、空が青いから…」読み返し、つぶやき、そして目を閉じて、心で何度も転がしてみます。何度も、何度も転がしてみます。言葉がだんだん広がって、雲の白さに吸い込まれ、やがて空の青さに溶け込んでいくような気持ちになりました。 この詩を書いたのは、実は少年刑務所に服役中の少年です。奈良少年刑務所が取り組んでいる「社会性涵養プログラム」の一環として、少年たちの更生を願い、彼らの情緒を耕すために、寮美千子(りょ ...

2020/5/8

家族のかたち

平成3年3月3日、夜も遅くなって入った一本の電話。 「兄が交通事故に遭いました。まだ詳しいことは分かりませんが、かなり危険な状態だそうです。場所は、教会から一時間ぐらいのところです。私のところからでは五時間以上もかかってしまうので、すみませんが見てきてもらえませんか」 電話の主は、親の代から長年にわたって信仰してくださっている信者さんでした。早速、夫と二人で病院に駆けつけました。 話には聞いていたものの、ご本人のSさんとはこの時が初対面でした。まだあちこちに血の跡がにじみ、顔はおそらく二倍ぐらいに腫れ上が ...

2020/5/8

ほめて 笑って ダイエット

「お父さん、今朝は何グラム?」 「そうだなあ、昨日はちょっと食べ過ぎたから、120グラム」 「お母さん、おばあちゃんは何グラム?」 「そうねえ、おばあちゃんは100グラム、と言いたいところだけど、このところ食欲ないし、80グラムは絶対食べてほしいよねえ。お母さんはいつものように110グラムでお願いします」 私たちのことをお父さん、お母さんと呼んでくれるこの子は、3か月ほど前にやってきた、わが家の里子ちゃんです。もうすっかり家族にとけ込んで、今日も朝食の手伝いをしてくれています。 さて、近頃わが家の食卓では ...

2020/5/8

思い出は半切り桶と共に

 わが家にある大きな半切り桶。半切り桶とは、お寿司を作る時に、ご飯にお酢を混ぜ合わせる木製の桶のことを言います。この半切り桶、私が嫁いできた時にはすでに使われていて、しかも充分に使いこまれた風格がありましたから、おそらく半世紀以上、わが家の台所を見てきた「台所の主」のような存在です。  底も周りも釘など一切使わず、木の板を組み合わせて作られていますが、長年使っているうちに、周囲を締めている金のタガが緩んだり、底の板が反ったりして、木と木の間に隙間ができ、お酢が漏れてしまうことがあります。 そのたびにタガを ...

2020/5/8

花として、人として

 何年か前、お客様を迎えるしつらえにと活けた蝋梅があまりにもかぐわしく、その上、透けるような花びらの美しさに魅せられて、それ以来、蝋梅は大好きな花になりました。  静岡にある信者さんのお宅に素敵な蝋梅の木があって、温かい土地柄、一月に訪れるともう満開の姿を見ることができます。一本の木全体が黄色く染まり、そこからあたり一面に、温かい光がこぼれ出しているようです。  「わが家にも欲しいなあ」。そんな念願がかなって、信者さんが挿し木をしてくださり、わざわざ持ってきてくださいました。どこに植えようかしら・・・と考 ...

2020/5/8

たましいの物語

 10月のことです。万葉のふるさと、飛鳥にほど近い実家で慶び事があり、夫と二人で久しぶりに出かけてきました。  田んぼの稲穂は金色に波打ち、柿の実が色づき始めた故郷は昔と変わりなく、毎日アスファルトとビルの多い街の中で生活している私にとっては、目が洗われるような新鮮な景色でした。  また、私が子どもの頃にはなかった新しいお祭りも行われているようで、あちらこちらの家や辻々に立つ、手作りの案山子のユーモラスな姿に心が和みました。どうやら最近では、この案山子を目当てに遠くからも人が集まるようです。昔の城跡へと続 ...

2020/5/8

夫婦の足し算

 過日、姪の結婚式に夫と娘と三人で参列しました。  前日まで心配した雨も上がり、真っ青な空に木々の緑が映えて、出発前から心が弾んできます。  式場となったのは、木の香の漂う真新しい天理教の教会で、会場設営や式の運営、また参列者を迎える準備のために、大勢の方々が労を惜しまず心を尽くしてくださっている様子を目の当たりにし、ありがたく思いました。  この日の主役、幼い頃からコロコロっとよく笑う笑顔美人の姪は、花嫁衣装がよく似合って、とてもきれいでした。  彼女に限らず、結婚式の時のお嫁さんって、本当に綺麗だと思 ...